犬のご機嫌取り

 が外出する際の護衛役は、公平を期すために一定練度を超えた刀剣男士で持ち回りとなっている。順当にいけば後藤藤四郎が任命されるはずだったが、今回の現代渡航ではたっての希望で、五月雨江が護衛の役目に選ばれた。  夜遅くまで外出した後に一泊してから本丸へ戻る段取りであったため、見目が未成年のそれである後藤藤四郎では差し障りがある。おまけに、五月雨江とは恋仲だ。例外的な指名に異議を唱える者はいなかった。  五月雨江は表面上平静を装っていたが、内心では恋人とのふたりきりの一夜を期待し、心に歓喜の花を咲かせていた。——出立前までは。  今回の現代渡航の目的を、ある会合に参加するためだと五月雨江は聞かされていた。しかし詳細な内容までは、直前まで知らされずにいたのだ。はなから知らされていれば——の初めての恋人である男も参加する同窓会であると耳に入れていれば、心持も全く異なったであろう。  その年頃の同窓会で、恋の花が返り咲くことを五月雨江は知っていた。演技のれっすんの資料として篭手切江に見せられたメロドラマで得た知識である。行先を知ってから、五月雨江の心には嵐が吹きすさんでいる。こうなることが分かっていたからは知らせなかったのだということが、明白であった。  ホテルへのチェックインを済ませ荷物を預けた後、と五月雨江は美容室へ向かった。現世を離れて長い彼女の、精一杯の見栄である。ヘアセットをしてもらった彼女を、いつもなら言葉の限りを尽くして誉めそやすところを、今の五月雨江は「美しいです」のたった一言で済ませてしまった。  五月雨江の嫉妬深さを誰よりも知るは、その素っ気ないリアクションに苦笑するばかりで不満を示さない。始終不服そうな五月雨江を「日付変わる前には抜けてくるから」と宥めたものの、彼はそんな遅くまで離れているつもりでいるのか、と不満を募らせるばかりだった。  会場までを送り届けた五月雨江は、すぐさま変装をして会場内へと忍び込んだ。  給仕スタッフを装えば周囲に疑われることはなく、顔と髪を変えればにも勘付かれることはない。彼女と旧友の会話を盗み聞く距離まで近付くことも容易かった。  こうも懐いた愛犬がこんなに近くにいるというのに、鈍い彼女は気付きもしない。己の変装の力量が素人に見破られるようなものでないと分かっていながらも、五月雨江はそれが面白くなかった。  の昔の恋人については、本人の口から聞いたことがあった。五月雨江がまだ一方的にを慕っていた頃の話である。酒宴の席、噂話好きの刀剣男士に乗せられた彼女がぽろっと零したのだ。  許し難いことに彼女のはじめてを全て奪い去った男を、五月雨江は当然のように憎んだ。彼女が審神者になるよりもずっと前の話で、変えようもない過去であることは承知の上ながら、どうしても自分の知らない彼女を独占した存在がいた、という事実が鼻持ちならなかったのである。へべれけな彼女は当時の呼び名まで無防備に晒して、その名は五月雨江の記憶に強く刻み込まれた。  賑やかな会場の中、耳を澄ませばその男を特定するのは造作もないことだった。いかにもサービス業に向いた、爽やかをひとがたに押し固めたような男である。日に焼けて健康的な肌とくっきりした笑い皺は、人相からして五月雨江と真逆であった。  たっぷり二時間半その店に滞在した後、と例の男を含めた参加者のうち半分ほどが二次会へと移った。  今度の会場は、日付が変わっても営業している居酒屋だ。五月雨江は一人飲みの客を装って、彼らの様子が伺えるカウンター席に陣取った。  偶然か意図したものか、の隣には例の男が座っていた。腸が煮えくりかえった五月雨江が怒りの形相で睨んでも、彼らはちっとも気付かない。カモフラージュで頼んだ酒を勢い任せに煽ったものの、元より毒と酒に強い耐性を持つ五月雨江の身体には、ちっとも酔いが回らなかった。  は酒に酔ってか頬を赤くしていて、上半身が覚束なく揺れていた。口の上手い旧友の下らない冗談に笑い転げるたび、男と肩をぶつけている。の顔を見つめる男の眼差しに心当たりがあって、五月雨江は純然たる殺意から無意識に手元の割り箸をへし折っていた。 「そろそろ出なきゃ」  スマホで時間を確認しながらそう口にしたの声を耳にし、五月雨江はぴくりとグラスを持つ手を止めた。手早く会計を済ませ、路地裏で変装を解く。現代に馴染む姿として篭手切江に用意してもらった衣服に再び身を包み、店の前でを待った。  居酒屋の横開きの扉が開いて、五月雨江はそちらに視線をやる。店から出てきたのは、と例の男だった。 「あの、本当に大丈夫だから」 「気にすんなって。それにさ、もうちょっと話したいんだよ」  苛立ちを通り越して、頭が冴えていくのを感じる。水を被ったように、後頭部から脊髄にかけてが冷たかった。  男が気安く掴んだ彼女の肩に、五月雨江の視線が縫い留められる。今すぐ斬り落としたい衝動に駆られながら、必死にそれを押し留めた。五月雨江はまだ、の可愛い犬でいたかったのだ。  五月雨江の足は自然に動いていた。  自ら打ち明けてくれた彼女の名を、今ばかりは敬称も付けず呼び捨てた。と男はハッと顔を上げ、同じ動きで五月雨江を見る。五月雨江は早足でに距離を縮め、その手を躊躇いなく掴んだ。 「心配しました。遅かったですね」 「さみ……ご、ごめん。もうちょっと早く出る予定だったんだけど」  男は突如現れた五月雨江を前に目を白黒させ、と五月雨江の合間で視線を行き来させている。五月雨江は態とらしく冷ややかな声色で、「恋人が世話になりました」と言い放った。  誰の目から見ても明らかな牽制に男は怯む。五月雨江が隣を見下ろせば、は何か言いたげに瞳を揺らしていたので、握った手に込めた力を強めることで黙殺した。  無理矢理切り上げるような会釈で男を振り落とし、五月雨江はの手を握ったまま繁華街を歩いた。千鳥足の酔っ払いが行き交いタバコの吸い殻の落ちた道を、誰にもぶつかることなく歩いて行く。ホテルまでの道のりは、始終無言であった。  ホテルから支給されたカードキー二枚のうち、一枚は五月雨江の手元にある。客室のセンサーにキーをかざすと、電子音と共にライトが緑に変わり、錠が開いた。  彼はずっと繋いでいた手を離して、ドアノブを捻りドアを開ける。手で入室を促せばは遠慮がちに部屋へと入り、五月雨江はその後に続いた。  後ろ手に鍵を閉め、カードスロットにカードキーを差し込むと客室に明かりが灯った。ドアに背をつけたままの五月雨江を、が不安げに見上げている。酒気により紅潮した頬と少しだけ乱れた化粧が扇情的だった。 「五月雨」  店を離れて、は初めて口を開いた。 「怒ってる?」  肯定も否定も、五月雨江はしたくなかった。怒りの根源は己が狭量であるが故というのはわかっていたし、は五月雨江を裏切るような真似は一切していない。彼女に感情をぶつけるのはただの八つ当たりに過ぎず、幼稚に思うままを打ち明けるのは憚られた。  本当は、芽吹き、咲き、散る花と同じようにそのままを愛でていたかった。五月雨江が恋をしたは天真爛漫で、感情が顔に出やすくって、泣いたり笑ったり忙しない。  そのくせ自分の弱みを曝け出すのが苦手で、その涙を舐め取ってやりたいと思ったから、五月雨江は今こうして彼女の隣にいる。自由気ままに過ごす彼女の旅路を一番そばで着いて回って、——最期までそばにありたい。最初はそんな、清い思慕であったはずなのに。 「頭にはどう見えますか」 「怒ってる。……ずっと」 「そうですか」  叱られた子供のような声色で呟いたを、五月雨江は腕の中に閉じ込めた。後頭部を掻き抱き耳元に唇を寄せると、吐息だけでは抵抗できなくなる。  衣服にうつった様々な香水の香り、呼気に混じる酒の匂い、——染み付いてしまった知らない男の気配。  五月雨江が髪をやさしく撫でると、の体はこの先を恐れて強張った。その手つきは、あまりにも五月雨江の態度と不釣り合いだった。 「頭」  囁くだけで、は五月雨江の服をぎゅっと握った。この声が堪らなく好きで、耳が弱いのを五月雨江は知っている。幾度も、それで悦ぶ様を見てきたから。 「先に湯浴みにしましょう。ご機嫌取りは、その後で」 「っ……」  五月雨江が後頭部から手を離すと同時に、はハッと顔を上げた。  猶予を与えられた事への安堵とその後への恐れが入り混じった複雑な表情である。震える唇に今すぐ噛みつきたい衝動を、五月雨江は堪えた。口付けをしてしまえば愛おしさが溢れて、手加減をしてしまいそうだったので。  またあのような真似をされては、身が持たない。誰がって——彼女が、だ。幾度も五月雨江の激情を受け止めるには、ひとの身はあまりに柔く脆い。 [newpage]  バスタオルとナイトウェアを持って浴室に入ろうとするの後を、五月雨江はついていった。てっきり別々でシャワーを浴びると思っていたらしいは、それに驚いて彼の胸を押し返そうとする。けれどそんな軟な力をものともせず、五月雨江はそのまま脱衣所に押し入った。 「後ろを向いてください」 「ひ、一人で脱げる!」 「着るときは私に頼んだのに、ですか?」  朝、五月雨江はこのワンピースのチャックを上げた。ならば下ろすのも、彼の役目のはずである。そう主張するように、五月雨江は後ろから彼女の腰を抱き寄せた。  髪をかき分けて項を晒すと、薄っすら皮膚の下に骨の浮き出るそこは微かに赤みを帯びている。五月雨江は思うまま、骨の突起に唇を寄せた。 「ひゃっ!?」  不意に触れた温かさには悲鳴を上げる。その隙に五月雨江は、チャックを腰まで下ろしてしまった。肩からワンピースを落とせば、それは床に落ちて輪を作った。  の身体を守るのは、あとは上下そろいの薄紫色の下着だけだ。五月雨江はあえてそれ以上は手を出さず、彼女が自分自身で下着を外す様を眺めていた。  後ろ手にホックを外し、ストラップを下ろすと柔らかそうな胸がまろび出る。隠すように猫背になるのが、余計に淫らだった。  ショーツを脱ぐところまで見ていようとしたところ、は「入るなら五月雨も脱いで」とじっとりと背を向けたまま睨んだ。まるで、仔犬の甘噛みのようなささやかな反抗心だ。それが可愛らしく思えて、五月雨江は自身の衣服に手をかけた。  五月雨江はに、「私に洗わせてくださいませんか」と申し出た。彼女はこれもご機嫌取りの一環であると思ったらしい。存外素直に了承してくれた。  崩れないよう入念にセットされた彼女の髪を解き、湯で濯ぐ。頭皮を傷つけぬよう指の腹で洗っているとそれが心地よいようで、鏡に映るの顔はとろんとリラックスしていた。夜遅い時間ということもあって、相応に眠気があるらしい。無論、五月雨江は何事もなく寝かせてやる気などなかったが。  その後五月雨江は「身体はいいから」と遠慮を示すを無理矢理抱きすくめ、彼女の身体をつま先まで入念にボディタオルで磨き上げた。首元、鎖骨、両腕、脇、胸……と下るように伝って、今や五月雨江しか触れられぬ場所まで、ぬかりなく。  かつてあの男もこうしてここに触れたのだろうか、とそんな考えが不意に頭を過り、五月雨江はの視界の外で眉を顰めた。しかしすぐさま、その思考を追い払う。二人きりの時間に、頭の中とはいえ部外者を立ち入らせるつもりはなかった。  前戯らしい淫らな触れ方などしていないのに、五月雨江の手が肌を滑るたびには息を漏らした。その様を見ているだけで、五月雨江の下半身に熱が集まっていく。の身体は今や、彼に肌を触れられるだけで期待する淫らなものに作り替えられている。その事実がたまらなく、彼の興奮を煽った。  浴室を出てバスタオルで湯雫を拭った後、ナイトウェアに手を伸ばすを制し、五月雨江は彼女を抱え上げた。脱衣所のドアを開くと溜まった湯気が客室に広がる。部屋のほとんどを占める大きなダブルベッドに、彼女の身体を落とした。  そもそも現代渡航の宿をシングル二部屋でもツインでもなく、ダブルベッドの部屋を取っているのが彼女の思惑の証左である。もまた、最初からその気であったのだ。尤も、五月雨江がここまで嫉妬心を煮詰めたまま迫ってくることになるとまでは想像していなかっただろうが。 「さみだれ、髪の毛まだ濡れて……」 「頭、湯浴みは済みました。今度は私のご機嫌取りの時間、ですよね?」  陳腐な時間稼ぎに耳を貸さず、五月雨江はの身体を組み敷いた。彼の有無を言わさぬ声色に、は動揺し身動ぎをする。濡れたままの頭を撫でてやれば、は小さくもお利口に頷いた。 「ど、うしたらいい……?」 「四つん這いになって腰を上げてください」  屈辱的な姿勢を命じられ、の目が泳ぐ。五月雨江の紫水晶がそれを見つめ返せば、はおずおずと言われるがまま寝返りを打ってうつ伏せになり、腰を高く掲げた。顔はベッドに伏せ、尻から裏腿までを五月雨江に向ける姿勢になる。一糸まとわぬ姿であるせいで、足の間は全て五月雨江の視線に晒されていた。 「濡れていますね。拭き忘れですか」 「っ!」 「……ああ、感じていただけですか」  五月雨江に見られているというだけで、の秘所からは蜜が溢れた。五月雨江の指先がわざとらしくそれを拭い、塗り広げるように愛撫する。  入り口の浅い部分を上下するだけで、指には粘り気のある糸が引いた。時折陰核のそばを掠めると、分かりやすく内ももが震える。それでも懸命に姿勢を崩さぬようにしているのがいじらしく、五月雨江は喉で笑みを押し殺す。 「っ、う、~~ッ……」 「どんどん溢れてきます。いやらしいですね。せっかく身を清めたのに、もう汚してしまって」 「……っ、うぅ、」 「恥ずかしくないんですか?」 「だ、って……さみだれに、見られて……」 「私が見ているだけで感じてしまうのですか。頭のここは」 「ひうッッ!?」  浅瀬を揺蕩わせていた指で不意に陰核を捏ねれば、は甲高い悲鳴を上げた。そこから続いて切れ目なくそこを刺激してやれば、水音は次第に激しくなる。 「あっ、あ、やッ! そこばっか、だめ、っだめ、ッ」 「頭は本当に雛尖が好きなんですね。だめではなく良いの間違いでは」 「っ、きもちい、きもちいからだめッ、あっ、あ、すぐイっちゃ、っ、あ、ああっ、」  の陰核はぷっくりと腫れ、五月雨江に触れられるのを待つように膨れていた。くりゅくりゅと小刻みに揺らすと内腿に伝うほどに愛液を滴らせる。 「うぅうッ、んッ、イ、いく、ッ…………っ」  絶頂を前にふるふると腰を震わせ始めたを目に、五月雨江は手を止めた。陰部から手を離すと、期待に熱を持ったそこが寸止め上体を嘆くようにひくひくと戦慄いている。 「なん、なんで……」  突然快楽を取り上げられて、は絶望的な声で五月雨江に訊ねた。 「頭、これは私のご機嫌取りです。頭を気持ちよくするための奉仕ではありません」 「っ……」  五月雨江の方を振り返ったの顔は情けなく蕩けていた。落ちかけた腰を咎めるように、五月雨江はの丸い尻を軽く叩く。は「ひっ」と声を上げ、再び尻を高く掲げた。 「先ほどの比ではないほどに濡れていますね。ここを触れられるのがそんなに好きですか」 「す、すきです……っ! き、もちい、……です」  五月雨江は指先で媚肉を広げ、未だ震えるそこに顔を寄せた。ふぅと息を吹きかけると、目に見えて恥口がくぱくぱと動く。触ってもらえないもどかしさを五月雨江に訴えかけているようだ。 「さ、五月雨、いきたい……っ、触って……っ」 「どこをですか」 「ここ、気持ちいいとこ……」  目の前の快感を追うことしか考えられず、は自らの手で陰部に触れた。五月雨江よりもほっそりとした、この日のためにネイルアートを施した指が自分自身を慰め始める。四つん這いになっているせいか上手く手を動かせないために、腰をかくかく揺すった。 「さみ、さみだれ、あ、ああ、うぅ、っ、ん、んんッ、く、」  情けなく自慰で快感を貪るも、無理な姿勢のせいか絶頂にまでは至れないらしい。彼の名を呼びながら喘ぎ声を上げるの、狡猾とも呼べるその様子が情けなく可愛くて、五月雨江は痴態を静かに眺めていた。 「ん、っ、あ、あっ、おねがいします、ッ、さみだれ、ぇっ……」 「そうお願いされては、応えないわけにはいきません。頭、もう少し足を開いてください」 「っ……」  は陰部から手を離すと、五月雨江に言われるがまま足を開いた。姿勢を変えたせいで開いた恥部から愛液が滴り、シーツに染みを作る。五月雨江はそこに顔を寄せ、舌を突き出して先端だけで陰部に触れた。 「っっっ!」  恥丘を辿るように舐め上げた後、尖らせた舌先で陰核を突く。ぷっくりと腫れたそこは触れられるだけでたまらないようで、は思わず足を閉じようとする。けれどそれを五月雨江は手で制した。 「私にいじわるは向いていないようです。頭にお願いされると、どんな命令も遂行しなくては、と思うのです」 「そ、こで、しゃべっ、っあぅっ、う、あ」 「頭は私に、ここを触れられるのが好きで、……気持ちいいんですよね」 「やっ、あ、ああっ、うぅ、ッん、ッすき、すきです、ッ、う」 「ん、ではたくさん、舌で、……可愛がってあげます」  舌先を小刻みに素早く動かして五月雨江はの望むままに快感を与えてやった。陰核の皮を剥き、より敏感になったそこをこねくり回す。  はシーツに顔を伏せ、くぐもった喘ぎ声を上げた。求めた癖に快感を逃がそうと腰を揺らす度、五月雨江はそれを叱責するように舌の動きを激しくした。 「あっ、い、いく、いっちゃ、うぐ、う゛」 「どうぞ、……ん、思う存分達してください」  ひくひくと震えた中に指を差し入れ、陰核だけでなく膣内を刺激してやる。激しさを増した愛撫に、はがくがくと腰を震わせた。 「っ、ッあ、ああ、っ、やあぁっっ、さみだれ、ッい、ッ、イぐ、い゛く、イク、イっちゃ、あ、ッッッ~~!! ッ……!!」  先ほど焦らされたせいもあって、はあっさりと達してしまった。絶頂した後も追いかけるように、腰を手で抱き寄せて陰部から口を離さず、五月雨江はそこに刺激を与え続ける。ぴくぴくと痙攣して自分でも儘ならないはずなのに、五月雨江に命じられたまま腰を掲げ続けているのが健気に見えた。 「あ゛っ……、あ……、ッは、はあ……っ、っく、うぅ、ん……ッ」 「頭、もう腰を下ろして構いませんよ」 「っ……ふ、」  五月雨江の言葉を合図に、はぐしゃりとシーツに崩れ落ちる。うつ伏せのまま激しく肩を上下させて呼吸しているのが窒息してしまいそうに見えて、五月雨江はの肩を掴んで仰向けに寝かせた。  とろんとした瞳は涙で濡れ、鼻や口元は体液でぐちゃぐちゃだ。焦らされて、恥ずかしいことを言われて、言わされて、イかされて。それなのに恨みがましく睨むどころか、の視線はこれ以上の快感を望むようだった。  その表情を目にして、五月雨江は思わずに口付けていた。なんて淫らで、愛おしいのか。ぞくりと彼女に与えられた身の内側が、興奮に打ち震えた。  唇の表面だけを触れさせては離し、また触れる。それを繰り返して、どちらともなく舌を絡めた。  の腕が乞うように五月雨江の首に回る。思えば、今日口付けをしたのは今このときが初めてだ。の痴態を目にし溜飲が下りた今、下らぬ見栄を張る必要はない。五月雨江は夢中になって、の唇を貪った。彼女もまたそれを許しの合図と捉えたようで、いつも通りの甘えた動きで五月雨江を求めた。 「あ……さみ、」 「頭」  視線が絡まって、再び唇が重なる。互いを求めあうように、いつしか互いに抱き合っていた。  の手が五月雨の背と後頭部に回って、縋るようにしがみつく。薄ら湿った肌が触れ合い吸い付き合う感覚が心地よく、幾度も抱き寄せ合った。  五月雨江は本能的に、勃起した男根をの身体に擦りつけていた。粘り気のある先走りがぬち、ぬちと肌を濡らす。互いの身体の感覚や凹凸を確かめ合ううち、そうなるのが自然であるように五月雨江の先端がの陰に宛がわれた。 「あっ……」  ぬかるんだの恥部を、切っ先が滑った。その拍子に陰核を掠め、は声を上げる。その様が愛らしく、わざと滑らせていると、辛抱ならなくなったが竿に手を添えた。 「五月雨、もう、いれて……っ、おく、ずっと切なくて……っ、」  強請られればもう、躊躇う理由はなかった。 「ッ、かしら、……!」  ぬぷ、とぬかるみに先端が沈む。濡れそぼった中にあっという間に五月雨江の刀身が収まった。熱く柔らかくも強く締め付ける中の感覚に、五月雨江は美しい形の眉を歪めた。 「さみ、さみだれ、あっ、あ、う、んんっ、うっ、あ」 「かしら、頭……ッ、」  荒い息を吐きながら快感を逃し、腰を引いては奥へ打ち付ける。奥を穿てばはまた達して、その締め付けに五月雨江も吐精した。  けれど、一度ばかりでは収まらない。五月雨江はくたりとしたを抱き起すと、今度は胡坐をかいた自分の上に乗せ、再び挿入した。下から揺すりながら唇を合わせ、滲むような熱さを堪能する。やがて耐え難くなって下から突き上げて絶頂させ、今度は五月雨江の身体をにまたがらせた。  騎乗位の心得のなかっただが、散々達してどこもかしこも気持ちよくなったせいか、思うがままに腰を動かした。胸を揺らしながら自ら快感を得られる部分を探って貪るさまがまた淫猥で、五月雨は達したそばから昂ぶりを覚えた。  体力が尽きかけたを横たわらせると、今度は後ろから伸し掛かるような体勢で挿入する。もはや声を出す元気もないくせに喉にかかった喘ぎ声を上げ、は善がった。今日はまだ碌に触れていなかった胸の先端を爪先で押し込むと、中がぎゅっと締まる。その締め付けで達しても、五月雨江はまだ抱き足りなかった。  結局その後も執拗に行為は続き、気付けばカーテンの隙間からは白い光が差し込んでいた。  その頃にははまさに前後不覚といった様相で、もはや達していないのかどうかもわからぬほどに全身で快感を感じつくしている。五月雨江はといえば、無尽蔵の体力は未だ尽きる様子はなかったが、周りを気にせず心ゆくまで愛し合ったおかげで、昨夜の怒りの炎はすっかり鎮火していた。  意識を飛ばしたが目を覚ます頃には日が高く上り、チェックアウトの時間はとっくに過ぎていた。  起き上がった彼女は時計を見て慌てたが、五月雨江が「延長をお願いしています」と言えば安心したようにベッドに再び崩れ落ちた。勢い任せに身体を起こした結果腰が痛むようで、呻き声を上げている。 「頭、昨夜は無体を強いて申し訳ありませんでした」 「あ……」  五月雨江がしゅんと眉を下げて謝罪すれば、は首を横に振った。 「五月雨が怒るのわかってて連れてきちゃった私も悪いから」 「しかし、これは私の未熟さが故です。頭が私以外の男に見向きもしないと分かっていて、悋気が抑えられませんでした」  ベッドに寝転がるに目線を合わせるように、五月雨江は床に膝を着いた。は彼の頭に手が届く位置まで寝転がって、五月雨江の手触りのいい髪を撫でる。 「私のことを嫌いになりましたか」 「なるわけないよ。やきもち妬いてくれるの、私のことが好きだからってわかるもん……」  まだ眠気が残っているらしい。五月雨江の髪を撫でながら、は目を細めた。  五月雨江はこういう答えが返ってくることを分かっていて、に言葉を求めたがる節があった。私が好きですか、と問うたびには頷き、肯定し、好きだと言葉で伝えてくれる。そうするたびに、この恋慕をより強く彼女の中に刻み付けられる気がした。己が彼女に向けるのと同じほどの激しい想いにいつか育つ日を願って。  はふと五月雨江の髪を撫でる手を止め、近場に転がっていた枕を手繰り寄せた。それに顔を埋めると、何かをぼやく。五月雨江は耳の良い犬だったから、くぐもった声も難なく聴きとることが出来た。 「……ちょっとだけ、期待してたし」

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