犬の上手なつかい方
- 犬の上手なつかい方
- 雨さに
- R-18
- A5
- 56P
婚約者に振られた審神者に付け込む五月雨江の話です。ハピエンです。エロシーンが3回あります。
審神者が♡と濁点で喘ぎますのでご注意ください。
審神者は、「次から現世に行くときはもうちょっと連れを考えよう」と思った。バーカウンターで隣に座る五月雨江は桃のノンアルコールカクテルを舐めている。「白桃——秋の季語ですね、頭」と言われたが、そんなことはどうでもよかった。審神者は、婚約者にこっぴどく振られたばかりであった。
学生時代からの恋人だった。審神者になる前、普通の女子学生だった審神者と普通の男子学生だった彼は普通に恋に落ち、普通に交際していた。
お互いこれといって自慢できることはなかったが、仲は良く、幸せだった。言葉だけで何も理解していないながらに将来を意識していたし、相手を置いて他の誰かとだなんて考えもしなかった。だから彼女が審神者になることが決まった時も別れるなんて話は出なかったし、審神者の任について七年が経った今——正確にはついさっきまで、婚約関係にあったわけだ。
原因は男の不貞だった。彼が勤める会社の女性新入社員で、お互いの両親にも挨拶を済ませているという。だからお前と別れたい——のだと。
嘘だと叫びたいほど苦しいのに、どこか冷静な審神者の頭は彼の話から時系列を計算する。前回の逢瀬よりずっと前から、彼らの関係が始まっていたんだと察してしまった。当時そんな素振りも全く見せず、いつもと同じように愛を囁いて自分を抱いた男のことを思い出すと反吐が出る。
極め付けは、男の言葉である。
「お前には部下がいるけど、あの子には俺しかいないんだ」
そう言われてしまったら、審神者は彼を何とも叱責できなくなった。ホテルのカフェラウンジで隣の席の客を装い護衛についていた五月雨江の殺気を視線で抑えただけ、理性的だったと己を褒めたたえたいとすら思っていた。
自棄になって酒を煽るのにわざわざ人のいる店を選んだのは、自分を律するためだ。ホテルの部屋に戻ってしまったら、年甲斐もなく泣き喚いてしまうかもしれないと思ったからだった。
連れ合いが気心の知れた刀ならまだよかった。だが、今日はよりにもよって五月雨江である。
正直なところ、審神者は彼を苦手としていた。部下としては申し分ない働きをしてくれている。犬を自称するだけあって忠義に厚く気性も穏やかだ。しかし、どこか掴みどころがない。彼と親しい村雲江の方が、来歴を読み解けば卑屈の原因がわかるため、審神者にとっては付き合い易かった。
何を以て彼が自分を慕ってくれているのかわからない。物である彼らが持ち主である審神者を慕うという大前提を除けば、彼が仕えるに足りえる何かが自分にあるとは思えない。ありていに言えば、幻滅されるのが怖かった。
それでも今日、現世に戻るための護衛として五月雨江を選んだのは、彼の立候補があったからである。旅へのあこがれが強いことは知っていたし、五月雨江は先の戦いで武功を上げていた。褒美代わりになるならと気軽に了承したが、こうなることが分かっていればこれまでと同様、気楽に話せる古株を連れてきていたはずだ。彼にとっても災難だろうとも思う。
一人で自暴自棄になり酒を煽る審神者を、五月雨江はただ見守っている。席を立つとついて来ようとするので「トイレ行くから」と言えば、扉の前で待っていた。
酒が回った審神者は、次第に五月雨江を疎ましく思い始めた。彼がいなければ、手近な男で自傷みたいな性行為をして憂さ晴らしをできたかもしれないのに。
——そんな考えが無意識に口を出ていたらしかった。
審神者は全身の血の気がさっと引くような感覚があって、顔を上げた。水の中を揺蕩うように朧げだった意識が急激に覚醒する。すぐ眼前に、整った顔があった。
「それは私ではいけませんか?」
「え、なに、なんだって」
「その行きずりの男の代わりに、私を使っていただけないかと」
——この男は何を言っている? いやそもそも、私、何を言ったんだ?
審神者が己が恐ろしくなった。酩酊するあまり口を滑らせるにしたって、相手と内容が悪すぎる。何とか誤魔化そうと色々と言葉を尽くしたが、五月雨江はちっとも聞く耳を持たなかった。
「ごめん、本当に違うから。口が滑ったっていうか、そんなことしないから」
「犬では頭の心を癒せませんか」
「そういう意味じゃなくって」
「ではぜひ使ってください」
「使うとかそんな、道具みたいじゃん」
「はい、頭の五月雨江です」
こんな具合で、埒が明かない。審神者はこの時初めて、この刀が存外しつこいことを知った。
押し問答をするうちに声が大きくなり、客の視線が二人に集まっていることに気付いた審神者は、これ以上周りに迷惑をかけるわけにはいかないと店を出ることにした。
会計をし、そのままエレベーターでホテルの上階へと上がる。機械音が響く生暖かい密室の中で、彼の故意か審神者の自意識過剰か、五月雨江との距離がいつもより近く感じた。
部屋へ着くと、空しいダブルベッドが審神者らを出迎えた。
これまでは、ここに婚約者の男を招くのが常だった。久しい恋人との逢瀬の場所になるはずだったから、一般庶民的金銭感覚を持つ審神者にとってはそれなりにいい部屋を取っている。護衛の部屋は隣に用意してあった。
審神者はまず、部屋に入るときに五月雨江を押し返すのに失敗した。刀剣男士、ましてや忍びの里、伊賀の生まれを来歴に持つ五月雨江が相手ではまず不可能である。彼は抜かりなく部屋に入りこみ、隙も作らぬまま「頭、外套を」とアウターを脱がせハンガーにかけた。
多少は酔いが醒めたとはいえ、酒が回って体がだるい審神者は、無意識にベッドに腰を下ろす。この段階で三つ、五月雨江との攻防で失点しているわけだが、彼女は気付かない。
五月雨江に促されるがままに靴を脱がされ、足首に指が這わされる。驚いた審神者が「ひっ」と声を上げ五月雨江を見下ろすと、彼は忠犬らしからぬ目つきをしていた。普段の凪いだ水面みたいな涼やかさが嘘のように、紫水晶がぎらぎらとしている。そこでようやく自分の過ちに気付く鈍感さこそが、彼女の四つ目の失点だった。
「さ、さみだれ」
「私では頭のお相手を務めるのに不足でしょうか」
「そうじゃない、でもだめだよ。部下にそんなこと、無理強いできないし」
「合意ですが」
「……五月雨は神様でしょ」
「はい。ですから孕ませる心配もない分安全かと」
「安全って……」
——五月雨江は審神者の胸中を理解していた。
村雲江にはない、五月雨江に相手に作られた心の壁。それによる虚栄心と、本当は傷ついた心を癒されたがっていること。あとは理性と変な見栄さえ捨てれば楽になれるのに、彼女はそれができない。
言い訳をいくつも並べ立ててはいるが、審神者は結局のところ怒ったり悲しんだりが人前でうまくできないのだった。
婚約者に酷いことを言われてまず、五月雨江を気にかけたのがその証拠だった。いくら主人に仇なす相手だろうと、考えなしに斬ってしまえば責任を負わされるのは審神者である。それを理解していない刀剣男士は一振りとしておらず、審神者が五月雨江を制したのは「私はそこまで傷ついていません」と言いたいだけのポーズであることは五月雨江にとって明白であった。
あとは、審神者が楽になれるだけの言い訳を与えてやればいい。五月雨江は「頭」と艶っぽく囁いた。
五月雨江にとって幸いなことに、彼は審神者の好みの男の姿に顕現していた。審神者はそんなこと一言も言ったことがなかったが、彼からすれば態度や視線でそれは明白であった。
「頭、何がいけないのでしょうか。外聞が気になるというのであれば、私が傷心の頭に取り入って手籠めにしたと言えばよいのです。そんな謀反の刀を置いておけないというならば、どうぞ一思いに頭の手で」
「や、やめてよ! そんなことしないってば」
恐ろしいことを言い出した五月雨江に、審神者はつい手が出た。五月雨江の口を審神者のやわい手が塞ぐ。彼女が自身の刀に冷酷に振舞えるはずがない、そう見立てた上での五月雨江の揺さぶりは審神者に相当効いたようで、想像をするだけで恐ろしかったのか、彼女はたちまち顔色を悪くした。
五月雨江は審神者の手を取り、瞼を伏せ、指先に口づけた。
「頭、どうかこの犬を使ってくださいませんか」
「…………」
情を誘う声色で五月雨江が縋れば、審神者はとうとうこの状況に流された。酒と傷心は、理性を押し流すに十分であった。彼女の一番の懸念点は五月雨江に幻滅されることだったが、これだけ懇願されてはもはやそれを言い訳にすることはできない。
五月雨江が暗示をかけるように「頭は楽にしていてください。犬に嚙まれたとでも思って」と囁く。忠臣に酷いことをしているという罪悪感は、それによって解きほぐされていった。
足元に傅いていた五月雨江は、無言を肯定と取ってベッドの上へ乗りあがった。後頭部を手で抱くようにしながら優しく審神者を横たえると、彼女は大した抵抗も出来ずベッドへ沈む。その所作があんまりに手馴れているので、審神者は恥ずかしくなってシーツを握った。
「あのさ、五月雨って……こういうの慣れてるの?」
「いいえ。頭が初めてです」
「そ、そう」
その返答に審神者は内心安堵した。審神者は元婚約者以外の男を知らない。元婚約者も彼女以外を知らない——と、当時は思っていたので気にしたことはなかったが、もし五月雨江がそういった店に通ったり、どこかで遊んだりしてほかの女を知っていた場合、それと比べられるのが耐え難かった。
「頭、口吸いをしてもよろしいでしょうか」
「……好きにすれば。ていうか、聞かないで」
「承知しました」
顎を指先で掬われ、審神者と五月雨江の唇が重なる。ちゅ、ちゅとわざとらしくリップノイズを立てられ、審神者はじっとりと妙な汗をかいた。
啄むような口づけから顔を背けると、それを追いかけた五月雨江が頬を舐める。驚いた審神者が口を開けば、その隙から舌を差し込んだ。ざらざらした舌の表面同士が擦れて、全身の神経がそこに集まったように鋭敏に五月雨江の熱と動きを感じ取り、快感が腰に抜けるようだった。
神との口付けが甘いことを、審神者はその時初めて知った。一方的に貪られ粘膜の気持ちいいところを追い立てられると、堪らなく物欲しさを覚えた。
今更ながら、とんでもないことを了承したのではと彼女は後悔した。が、後戻りする隙を五月雨江が与えるはずもない。審神者が、唾液で濡れた自身の唇をぺろりと舐める五月雨江に目を奪われているうちに、彼の手は衣服へとかかった。
婚約者のために施したメイク、着飾ったとっておきの洋服、新調したばかりの上下揃えの下着——それらが別の男に、それも忠臣である五月雨江に乱されるというのは、どうにも言葉にし難い背徳感があった。
初めてだという癖に、五月雨江の手つきは手慣れていた。審神者のボタンを外しながら、首筋に舌を這わせる。ブラウスの前を寛げさせると、五月雨江の手が下着の上から胸を揉みしだく。その手つきはふにふにと柔らかさを確かめるような、子供っぽい触れ方だった。
しかし、先ほどの口付けのせいで体に熱が灯ってしまった審神者の身体には、その前戯と呼ぶには幼稚な触れ方がもどかしく感じた。どうして欲しいと言えるほど恥を捨てきれない彼女は、ただ物欲しそうな目で自らの身体に触れる五月雨江を見つめることしかできなかった。
「頭、失礼します」
「えっ、あっ……」
菖蒲色の爪先がブラジャーをずらし、乳頭を晒させる。すっかり立ち上がったそこは、恥ずかしげもなくその存在を主張していた。下着で擦れる僅かな刺激すら快感を拾い上げる。
五月雨江がそこに舌を這わせた。舌の真ん中でゆっくり全体を舐め挙げられてから、尖らせた舌先が周りをなぞるようにしてうごめく。じれったいその緩慢な動きに、審神者は無意識に胸を反らせて彼の口に押し付けていた。
「あの、五月雨……」
「何か作法を間違えていたでしょうか」
「そ、じゃなくて……」
この先こんなに羞恥することがあるだろうか、と審神者は思った。普段から色香を漂わせるその美しい顔は、平素任務の指示を待つのと同じように審神者の反応を伺った。
「吸って、ほしい」
顔を背けながら小さな声でそう言うと、五月雨江は嬉しそうに声を弾ませて「承知しました」と言った。
彼の薄い唇が、命じられるままに乳首へと吸い付く。飼い主におやつをもらった犬が尻尾を振り回しながらがっつくみたいに、無心になって五月雨江の舌は彼女を悦ばせた。
根本から強く吸い上げられて、胸から体の奥にじりじりとした快感が走った。反対側の乳首をこねられて、審神者のつま先がシーツを掻く。気が付けばゆらゆらと腰をベッドに擦りつけるように揺らしていた。
「んっ……!」
乳首を愛撫していた手が下半身に伸び、太ももを撫でながらスカートの中へと忍び込んだ。起用にストッキングを太ももまで下ろすと、その手は下着越しに窪んだ丘を人差し指と中指で撫でる。わずかに熱を持って主張する陰核を指先が見つけると、五月雨江の爪先はそこを執拗に上下した。
「ッッ……!! あっ、あ♡」
露骨に高い声で喘いだ審神者の反応に気を良くした五月雨江は、すりすりとレースを越しにそこを擦った。全体を揺するように擦られたかと思うと、爪に引っ掛けるみたいに陰核をいじめられる。クロッチ部分は染み出した愛液で張り付き、厭らしい形が浮き出していた。
「濡れています」
「い、言わないで……」
「脱がせてもよろしいですか?」
「だから、そういうの聞かないでって、言った……」
「そうでした」
自分ばかりがあられもない声を上げ、五月雨江の声色が普段と全く変わらぬ調子であることも、審神者の羞恥心を煽った。彼女は腕を顔で覆ったが、視界からの情報を遮断すると肌を五月雨江に晒しているという感覚が却って強調された。
五月雨江がショーツに手をかけ、審神者の足を持ち上げながらストッキングと共に脱がせていく。一糸まとわぬ姿になった審神者は、今一度この状況を振り返った。本来であれば、こうして彼女を抱くのは元婚約者のはずだった。
——それがどうしてこんな、こんなことに。
今更そんなことを胸の内で嘆いても無意味だ。ちらりと腕の隙間から覗いた顔はあまりにも端正で、普段冷静で滅多に表情を崩さない、静かに降りしきる春の雨のような彼の目が熱っぽく据わっているのを見て、審神者はわずかに愉悦を覚えた。
「!? っ、ちょっと」
五月雨江は晒された性器に躊躇いなくその顔を寄せた。さすがに狼狽えた審神者が足をばたつかせて抗うも、それを掴まれて足を開かれる。五月雨江は突然抵抗されたことが不本意だというように、きょとんとした顔で両足の間から彼女を見下ろした。
「はい、なんでしょうか」
「なんでしょうかじゃなくて、その、今、なにを」
「舐めようとしていたのですが」
「……き、きたないからダメ」
「汚くありません」
「汚いよ……! だって、お風呂入ってないし」
これまで舐められたことがないわけではなかったが、それはシャワーを浴びて身を清めたあとのことだ。用も足したばかりだというのに信じられない、耐えられないと抵抗したが、五月雨江に掴まれた足はびくともしない。彼は太ももを押し上げる形で手を持ち換えて、彼女の膝を腹に押し付けた。
「では私が綺麗にします」
「えっ、ん、ひゃ、ッ……!?♡」
陰部に湿度の高い吐息がかかって、熱い舌先がそこを這った。垂れた愛液を舐め取ったと思うと、それを塗りたくるように敏感な突起を舌の表面が包む。審神者はたまらずシーツをめちゃくちゃに掴んで高い声を上げた。
陰核の包皮を剥くように、五月雨江は舌先を尖らせてつんつんと刺激する。ともすれば痛みに変わりそうな鋭い刺激が、敏感な場所に与えられ続けた。
奥からどろりと溢れた体液を何の躊躇いもなく啜られ、じゅるじゅる、じゅぞぞと下品な水音が響く。中に舌を差し込むと、五月雨江は入り口を解すように浅いところを舐め回した。
無抵抗に足を広げたままになった彼女の太ももから手を離し、膣壁を舐ぶりながら親指でクリトリスをぐりぐりと押しつぶされると、審神者の腰が暴れるように跳ねた。
「指を入れますね」
「ひっ……ん、っ、……!♡」
五月雨江の指が膣内へと挿入された。中指が一本、探るように膣内を上下左右に広げていく。舌で解されたそこは熱を帯び、指一本程度なら容易く咥え込む。これなら問題ないと判断した五月雨江が人差し指を増やして、今度は腹の内側、ざらざらした部分を執拗に押すようにして擦った。広げられるよりは擦られる方が感じるのだと知った五月雨江がそこを責め立てると、審神者の膣内がぎゅうぎゅうと収縮する。
「さみ、イ゛く、イくっ……♡!!」
「頭、どうぞ」
「あっ、ぐ、うぅッ、んんん゛う゛っっっっ~~♡♡」
ついでにおざなりになっていたクリトリスを親指で弾いてやると、悲鳴みたいな声を上げて審神者は呆気なく達した。びくびく震えてシーツから浮いた腰を押さえ、追い立てるように五月雨江は指での愛撫を激しくする。
「さみ゛だれ、やっ、やめッ……♡ イ゛ってる、イ゛ってる゛のにっ……♡」
指の動きを早め中を激しく擦ると、どこかに力を入れていないと気が触れてしまいそうなのか、審神者は内股を震わせながら足を閉じようとした。五月雨江は指での愛撫を続けながら、膝裏を片手で抑えて彼女の抵抗めいた動きを制する。
「はーッ……♡ っは……、し、しぬ……♡」
彼が手を休めた頃には、審神者はぐったりと荒い息を漏らしながら倒れ込んでいた。目の焦点も合わず、時折絶頂の余韻で痙攣している。己の手で激しく乱れた主人に、五月雨江はかつて感じたことのない興奮を覚えた。
五月雨江は片手で己のベルトを外しズボンの前を寛げながら、足を大きく開いたままの審神者の腰を掴んだ。審神者の痴態を目にし、淫靡な匂いと味によって五月雨江の性器は痛いほどに腫れあがっている。硬く勃起したそれを扱きながら、五月雨江は唾液をごくりと飲み込んだ。
「……頭、私を頭の中へ入れて下さい」
「は……、さみ、へ、っ……!?」
大きく怒張したそれを審神者に見せつけるようにして、五月雨江はベッドの上で膝立ちになった。丸い橙のシーリングライトに背後を照らされた彼の影が審神者の体に落ちる。それがより一層、彼女に恐怖心を与えた。
審神者は元婚約者以外の男を知らない。性差のほとんどない時期ならともかく、物心がついてからは男性の性器などほかに目にしたことはなかった。それでも、比較対象を他に知らない彼女ですら五月雨江のそれが相当に大きいのだと理解できる。失礼な話、あの男とは比較にもならないような立派な一物に、彼女は硬直した。
「さ、五月雨さぁ……、おっきくない?」
「そうでしょうか? 私程度なら本丸の中では——」
「っ!? い、言わなくていい!! 言わなくていいから!!」
危うく自本丸の下半身事情まで知らされそうになり、審神者は大慌てで五月雨江の言葉を遮った。
確かに、成人男性らしい姿の刀剣男士の中で、五月雨江は体の大きい方ではない。筋肉質ではあるものの、同じ江の打刀の中では僅差ながら最も小柄だ。彼を基準に他の刀種、特に槍や薙刀、大太刀なんかのの体の大きさを考えると——いいや、よくない。考えるべきじゃない。審神者は頭を振りかぶって、その現実逃避染みた思考を追い出した。
「……他の刀のことを考えていますか」
「それは五月雨が……、ごめん、なんでもない」
「はい。——では、私のこと以外考えられなくして差し上げます」
審神者の下半身を抱えた五月雨江が、先端を審神者の膣口に押し当てた。ぬろぬろと恥丘を往復してから、割れ目の肉を掻き分けるようにして腰を進める。尖端が入り込んで、自分の体の一部が広げられる感覚に審神者はぞわりと鳥肌を立てた。
腰を持ち上げるようにしながら五月雨江は奥へと挿入を進める。散々慣らされてぬめった膣口は、根元に近づくごとに苦し気に広げられていった。
「うぅ、んッ……」
「っ、ふ……ッ、頭……」
五月雨江が堪らなそうに眼を細め、だらしなく口を開けている。初めての挿入で締め付けられて悦さそうに眉根を寄せているのを見ると、審神者は途端に彼が可愛く思えた。膣口は痛むが、さっきまで散々己を啼かせた理知的な顔が苦し気に息を吐く姿を見ていると興奮が勝る。
「頭、奥まで入っても……いいですか」
「えっ、うん……?」
余裕の感じられない震えた声で、五月雨江は懇願するように訊ねた。審神者が了承すると、さっきまでの慎重な動きが嘘のように、割入るように乱暴に挿入が進められた。
「あ゛ッ……!?」
根っこに近づくごとに太さが増すそれが、遠慮なしに襞を掻き分ける。審神者が思っていた奥よりずっとその先まで入り込んで、まだ足りないと言わんばかりに中で怒張していた。
「苦し……ッ! さ、さみ、止まっ……」
「もう少しです、頭……」
——何がもう少しだ! これ以上は無理!
そう暴れたくとも、審神者の体はその質量を受け入れることで精いっぱいで碌に抵抗も出来ない。これ以上はないという程に広がった内臓が苦しくて息をするのも必死だという審神者に、五月雨江はそれ以上の無体を強いた。
「ひんッッッ!?♡」
開いた膣口の上の突起を指先で弄ぶと、審神者は動物めいた悲鳴を上げた。膣が収縮して、無理矢理嚥下させるように動きに合わせて奥に挿入する。
「ッ……きついです、……」
「うぅ……! っ、……!♡」
五月雨江の下生えが結合部に触れるほどに奥深く挿入された時には、審神者はもう何も考えられなくなっていた。
身体の開いてはいけないところまで五月雨江の男性器が入り込んでいる気さえして、今までの性経験がままごとみたいに思える。五月雨江は恍惚とした表情で動かないまま、審神者の膣内の温度を感じるように太ももを撫でていた。
「動きますね」
「っお……!?」
審神者の返事も聞かず、五月雨江は怒張をずるりと引き抜いた。僅かな解放感と擦れる中への快感で、審神者はだらしない声を漏らす。と、すぐに奥を殴りつける様に叩かれて、声にならない悲鳴が上がった。暴力的なその刺激に、それだけで達してしまう。誰にも抉られたことのなかった最奥の快感を審神者は知らされてしまった。
「ぐっ、うぅう、っ……! お゛っ、あ……ッ♡♡」
「はッ、頭、頭……!」
びくびくと戦慄く膣内の動きを感じながら、五月雨江は動きを止めない。快感を拾いやすい部分の前後運動と奥への刺激で、審神者はずっと絶頂状態にあった。
五月雨江は中の具合がたまらないらしく、夢中で腰を振っている。審神者の投げ出された足が動きに合わせて揺れていた。より深く繋がろうと、五月雨江は審神者の頭の横に両腕をついて、覆いかぶさるようにして押し倒した。
「あ゛ッ♡ ん゛っ……!!」
「頭、ん……かしら、」
一際奥に挿入すると、五月雨江は腰の動きを止めてじわじわと締め付けを堪能しながら、べろべろと審神者の顔を舐め始めた。だらしなく出た彼女の舌を捉え、ざらざらと表面を擦り合わせる。どこもかしこも、五月雨江と審神者の体液が混ざってしまっていた。
審神者は五月雨江の首に腕を回し、より激しく唇を貪り合った。媚薬めいた甘い唾液が、神経を直接撫でるような快感を齎していた。
「さみ……、さみだれ……♡」
「……はい、頭の、五月雨江です……」
互いを全身に感じながら口を吸い合っていたが、五月雨江はもう限界が近いようだ。唇を離すと、彼は動きやすいように審神者の腰を捉え直して彼女の膣奥を穿った。性急なピストン運動に揺さぶられ、胸が上下に弾む。
「あ゛っ♡ はっ、うッ、んン、」
「頭ッ、……! 出します……っ」
亀頭を子宮口に押しつけるようにして、最奥で五月雨江は果てた。鈍い膣内で、熱く硬かったそれが柔らかくなっていくのを感じながら審神者はぐったりと脱力した。
中に出されるのってこんな感じなんだ、と彼女は蕩けた頭で思考する。注がれた中の感覚より、入り口に垂れてくる精液の不快感が強い。
五月雨江の性器が抜かれると、更に奥から体液が混ざったものが溢れ出し、シーツを汚した。
「頭、ご気分はいかがですか。物足りないようでしたら、まだ続けます」
「まだ、って……もう、むりだよ……」
夢うつつの境が曖昧になるほどの微睡みの中、審神者はぼうっと今日一日のことに思いを馳せた。
ずっと楽しみにしていたはずの婚約者との逢瀬が別れ話で滅茶苦茶になって、やけくそで酒を流し込み忠臣に閨事を命じている。たった数時間で、彼女の日常は一変してしまった。今後のことを考えられぬほどに、心身ともに疲弊し尽くしている。
審神者の顔を覗き込む五月雨江と目が合ったので、彼女はそちらに手を伸ばした。髪に触れると、彼は撫でてくれと媚びる犬のように瞼を閉じて審神者の手に頭を擦り付ける。そのまま淡藤色の髪を手櫛で梳かし、温かくて丸い頭を撫でた。後頭部に手を回して審神者が目を閉じると、五月雨江は音も立てずに近づいて彼女に口付ける。
「さみ……んっ、ふ……」
静かながらも呼吸する隙も与えぬ五月雨江の口付けに酸素を奪われ、情事後の気だるさも手伝って審神者はどんどん眠くなっていく。瞼の重みを心地よく感じながら、五月雨江の「お休みになられますか。どうぞ、あと始末はお任せください」という声を審神者は聞いた。彼女はその言葉に甘え、微睡に身を任せて眠りに身を投じた。
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